2010年 12月 30日
墨屋夕貴 ジュエリー展「デコぼこ」 |
今年もっとも印象的だった展覧会がふたつ(わたしのなかでは内藤礼と愛ちゃんは特別扱いなので、それはさて措くことにしよう)。どちらも「ギャラリー・ヨコ」で開かれたもので、ひとつは虎尾 隆さんの『レニュータ・ヨアナは黒いサボテンの夢をみた』。そしてもうひとつが今回ご紹介する墨屋夕貴さんのジュエリー展『デコぼこ』である。
「ギャラリーヨコ」は駅までの通り道にあるので、面白そうな催しにはときどき入ってみる。先述の虎尾さんのときもそうだった。墨屋さんのときは、失礼ながら「ジュエリー展」の文字を見て、「なんだ物販系か」と思っていた。でもモッタちゃんに似合いそうなものがあればいいな、という軽い気持ちでそこに入った。しかし一歩足を踏み入れた瞬間、じぶんが完全な過ちを犯していたことに気が付いた。気が付いてよかった。そこに展開されているのは、まさに本物の「アート」と呼べるものだったからだ。
墨屋さんの許可を得て、写真を撮らせていただいた。作品はもちろんのこと、展示のしかたにも墨屋さんのセンスが光っています。わたしがどうのこうの言うより、一見に如かず、というわけで以下の写真をご覧ください。
額縁ではなく、四方を虫ピンで止めて、赤い糸を張っただけのシンプルな「フレーム」。
壁に鉛筆で直接書かれたタイトル。このタイトルについては後述。
墨屋さんにお話をうかがったところ、テーマのようなものは「人間性」だという返事がかえってきた。「過去と未来」「日常と非日常」のような、一見背反するような要素の「拮抗」の中で、彼女は人間というものをとらえている、と感じた。それはまるで「ジュエリー」そのものにも呼応している。装飾品としての実用性と、アートとしての普遍性。これらの作品群のフォルムの厳しさ・力強さは、そういう「せめぎあい」の中から生まれてくるのだろう。
墨屋さん、ありがとうございました!
by stcl
| 2010-12-30 00:06
| photo essays